安倍晋三首相が8月24日慶應大病院に受診する時の様子を写した写真が、マスクの紐が途切れているように見えるため「合成」だとの指摘がツイッターで拡散した。しかし同じタイミングで別の撮影者が写したものでも、同じような見え方をする写真・映像が複数確認できた。(大船怜)
「安倍総理の顔色を悪くするために画像補正したら、マスクがくすんだので合成したようです」などとする画像付きの投稿
(2020年8月24日、ツイッター投稿)
【根拠不明】 同じタイミングで複数のメディアの別の撮影者が写したものでも、同じような見え方をする写真・映像が複数確認できた。異なるメディアが同時に同じような合成写真・映像を作るとは考えにくい。
投稿は、8月24日に都内の病院を訪れた安倍晋三首相を写した写真(実際は毎日新聞でなく朝日新聞によるもの)について、メディアが健康不安説を煽るため意図的に加工したと主張している。投稿はツイッター上で1.3万リツイート以上も拡散した。
元新潟県知事の米山隆一氏も、日刊ゲンダイによるこれと似た写真を引きながら「この画像、いくら何でも加工があからさますぎるでしょう…。マスクを忘れたなら忘れたでいいのに…。」などとして、首相がマスクを付け忘れたのが画像加工によって修正されたと主張していた(その後、削除されている)。
写真では、首相が付けているマスクの紐が耳にかかっておらず途中で途切れているかのように見える。実は、この紐が途切れて見える写真は、他に毎日新聞、時事通信、産経新聞でも掲載されている。撮影時刻はいずれも8月24日9:55だが、異なる瞬間を捉えたもので、撮影者は少なくとも朝日・毎日・産経各紙においてそれぞれ別人だった(時事通信、日刊ゲンダイは撮影者名記載無し)。
さらに、NNNによる映像でも、静止画と同じような紐の形を見ることができる。この映像は8月24日10:04にサイトにアップされたもので、10:08にTwitterで配信し、10:09に日本テレビの速報ニュースとして放送されたものだ(冒頭写真)。
仮にこれらが画像合成の結果であるならば、6つのメディアはそれぞれ別に写真や映像を撮影したものを、極めて短時間で独自に合成を作っておきながら、揃って同じミスを犯したということになるが、これは非現実的だろう。
毎日新聞や時事通信による病院を出る時の写真では、結び目から余ったマスク紐の端が長く飛び出ている様子を見ることができる。このことから、途切れて見えるのはこの余った紐の端で、耳にかかる紐は偶然これに重なって見えなくなったと考えられる。【※9/3追記:病院へ向かう場面を別角度で捉えた産経新聞の写真も参照。】
この件はバズフィードも検証し、合成とは考えにくいと指摘している。
結論
以上のとおり、複数のメディアの別の撮影者による写真・映像でも、マスクの紐が途切れて見える画像が確認できており、これら全てが短時間のうちに同じ手法で合成したとは考えにくい。「合成」だとする根拠は極めて薄弱で、「根拠不明」と判定する。
(冒頭写真:日本テレビのニュース動画、2020年8月24日10:09放送より)