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日米地位協定「改訂」の実態 英伊は基地管理権も渡さず

今回、1960年に制定されて以来、初めてとなる協定の改訂が実現するというのが安倍総理の発言の趣旨だが、実際には、大きな改訂とはなりそうもない。安倍総理が口にした通り、軍属を協定の与えた地位の対象から外すということで議論を終えたいというのが米政府の思惑だからだ。具体的には、協定の対象を規定した1条から、軍属を外すということだ。

訓練をするアメリカ軍(撮影:アイ・アジア)
訓練をするアメリカ軍(撮影:アイ・アジア)

今回、殺人の疑いで逮捕されたケネス・フランクリン・シンザト容疑者が軍属だから、軍属を地位協定の対象から外すことで沖縄の怒りがおさまると日米両政府は踏んでいるのかもしれない。しかし、それでは根本的な問題の解決にならないと見る識者は多い。

沖縄で米軍を取材し続けてきたジャーナリストの屋良朝博氏は、議論のすり替えだという印象が強いとして次のように話す。

「地位協定の最も大きな問題は、米軍に施設の独占的な管理権を認めている3条です。管理権をすべて米軍に移譲している日本は、この部分をみた場合、独立国ではないのです。イタリア、イギリスなどは管理権を渡さないし、ドイツも基地内であっても自国の法律を適用できる状態になっています。それは地位協定ではなく、米国と受け入れ国が2国間で締結している別の協定、例えば基地使用協定とか基地使用に関わる覚書などの形でなされています。日本にはそれがまったくないというのが日米地位協定の問題の根幹です」

アメリカ軍基地

つまり3条が改訂されない限り、米軍の特権的な立場は維持され続ける。それが米軍人、軍属に自分達には特権があるとの勘違いを起こさせ、事件事故が無くならない原因となっていると言えるのかもしれない。

危機感を持った在日米軍司令部が、基地外での禁酒例を出して数日内に2件も飲酒運転による事故が起きている事実は重い。しかし残念ながら、安倍政権の中からそうした根本的な解決を探る姿勢は見えてこない。

 

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