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《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.20/2020.2.19)

《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.20/2020.2.19)

インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜ネット上の情報検証まとめ管理人)


(1)「イギリスEU離脱の影響で空港で1時間待ち」

日付
2/16
発信者
ユルクヤク(まとめブログ)
媒体
Twitter
拡散数
3600RT
内容
海外ユーザーのTwitter投稿のスクリーンショット画像を添付し、「アムステルダムの空港で入国審査を受けるため長蛇の列に並ばされた、あるイギリス人がブチ切れてます。『こんなことのためにEU離脱を支持したんじゃない!』と愚痴をこぼしており、この日に初めて自分たちがEUから離脱した意味を知ったようです。」とする投稿。
引用
【検証】遅延の原因は新人研修

「ユルクヤク」はその後この件を「イギリス人さん、旅行先の空港でEU離脱の本当の意味を知り愕然とするwwwww」と題して記事化。その中で「イギリス人はこれまで”外国人“のレーンに並ぶ必要がなく、”EU加盟国“専用レーンで早々にパスポートチェックを受けることが出来ました。ただEUを抜けた今、その特権がなくなったことを意味するのです。」と、混雑はイギリスのEU離脱が原因であるかのように説明した(キャッシュ)。

イギリス人ユーザー投稿は実際にあったもので、審査の混雑も事実だったようだが、EU離脱とは無関係と思われる。「ユルクヤク」の記事も出典として挙げていた英紙Independentには、イギリスは現在離脱の移行期間にあり2021年1月までは出入国の手続きが変更されないため、離脱が遅延の原因とは考えにくいと書かれている。

また現場となったアムステルダム・スキポール空港の公式Twitterアカウントも次のようにツイートし、遅延は新人研修の影響だと述べている。

There have been no changes at our airport for UK travellers. New staff members were being trained yesterday, leading to longer queues at the passport control than usual. Sadly, this tweet has taken on a life of its own.

(筆者訳:当空港はイギリスの旅行者に対する変更は行っていません。昨日は新しいスタッフが研修中で、そのために普段より入国審査の列が長くなってしまいました。残念ながらこのツイートは歯止めが効かなくなってしまっています。)

スキポール空港公式HPにも、2021年1月31日までは出入国手続きに一切の変更は無いと説明されている。それ以降はイギリスとEUとの交渉次第だという。

これらのことは「ユルクヤク」の記事中でも海外の匿名掲示板redditの投稿を引いて言及されているほか、記事を紹介するツイートでも説明されているが、上掲の通り誤った記述と併存する形になっている。


(2)「『一瞬メガネに見える棒』はペルシャから中国に渡ったもの」

日付
2/13
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
1万RT
内容
「一瞬メガネに見える棒」と話題になったアクセサリーについて、「これ、もともとペルシャで顔半分をシルクで覆って隠すために使われる器具で、中国に渡り、それが転じて装飾品となり、布よりも耳周りの宝石などの飾りを重要視するようになった、それがリバイバルで大国意識が復活した中国で近年流行っているやつだよね」とする投稿。
引用
アカウント名等モザイク処理は筆者による
【検証】元はネタツイート

上掲の通りこの投稿は13日午後2時33分のものだが、これよりわずかに前の午後2時31分、ほぼ同じ文面で最後が「~って嘘を考えた」で終わるツイートが投稿されていた。つまり、「ペルシャから中国に渡った」というのは元々単なるネタ(冗談)にすぎない。

実際はこの「棒」は特に歴史があるわけではなく、アクセサリーの一種として最近作られたもののようだ。


(3)新型コロナウイルス関連特集

以下、新型コロナウイルス(新型肺炎)に関連する“要注意”情報のうち、主要なものを簡潔に紹介します。(順不同)

1.「遺体を燃やすと出る二酸化硫黄が武漢で大量検出

→表示は予測値で実測ではない

この主張の根拠として参照されていたサイトは実際には二酸化硫黄(SO2)濃度の予測値を表示していて、リアルタイムの実測値は反映されていない。他サイトで見られる実測値に特段異常な変化は確認できなかった。遺体を燃やしてSO2濃度が有意に上がることは考えにくく、高い予測値は石炭火力発電などが理由と考えられる。


2.「武漢市民が移動した痕跡(画像)」

→全世界の航空経路の図

画像は世界の航空ネットワークすべてを表示した経路図で、特に武漢市民の移動を表したものではない。


3.「非正規の雇用者は有給休暇が無い」

→非正規でも有休は付与される

新型コロナウイルス感染が疑われる際の病院受診判断の目安を厚労省が示したのに関連し、参議院議員の佐藤正久‏氏が「会社を休ませる指示なら、非正規の雇用者の保障をしないと。正規は有給休暇はあっても、非正規の方々にはありません。」とツイート。しかし実際には法律上パートやアルバイト、派遣社員などの非正規雇用者にも有給休暇は与えられる。


4.「検査で陰性の場合8万円自己負担

→全額公費負担

新型コロナウイルス感染の疑いがある場合の検査費用は、結果が陰性でも陽性でも全額公費負担で、自己負担は無料となる。ただし都道府県が必要と判断した場合のみが対象で、任意検査はそもそも行われていない。


5.「横浜の映画館で感染の疑い」

→無関係のお知らせを誤解

横浜市内の映画館のHP上で特定の回の鑑賞者に「お伝えしたいことがございます」という「お知らせ」が告知されていたことで憶測を呼んだが、映画館の公式アカウントが「新型コロナウイルスとは無関係」と表明した。


6.「李文亮医師の遺書」

→別人による創作を改変か

この文章は別人が李医師の心情を想像して創作した文章と大部分一致しており、それが李医師本人の遺書として改変されて広まった可能性が高い。


7.「武漢のマンションで部屋をアルコール消毒しようとして引火(動画)」

→重慶の動画 火元はタバコ

拡散されたマンション火災の動画は重慶のもので、消防当局は火元をタバコと発表している。なお中国のネット上では同様に「アルコール消毒で引火」として複数のパターンの動画が拡散されており、うち上海のものとする動画を拡散させた人物は警察に拘束され罰金を課せられている。


その他

FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)では新型コロナウイルスに関する国内外の情報の検証結果などをまとめた特設サイトを開設している。他に新型コロナウイルスで『北京封鎖』」「新型コロナで『戦々恐々とする中』玉城デニー知事が踊ったなどの誤情報や、真偽に疑義のある情報も紹介し、随時更新している。

また前回前々回のまとめでは、新型肺炎関連の「ウイルスはアルコールでは消毒出来ない」「新型コロナウイルスにHIVウイルスのタンパク質が挿入されている」などの誤情報についても検証を多数紹介している。

 

(過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年2月26日の予定です)

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