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《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.25/2020.3.25)

《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.25/2020.3.25)

インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜ネット上の情報検証まとめ管理人


(1)「バッタ対策に中国から10万羽のアヒル軍」

日付
2/28
発信者
レコードチャイナ
媒体
Web記事
拡散数
Twitterで4.4万RT
内容
「パキスタンのバッタ被害対策に中国が10万羽の『アヒル軍』派兵―中国メディア」と題し、「2020年2月27日、中国メディアの観察者網は、パキスタンで発生している蝗害(こうがい=イナゴ・バッタ類による被害)対策で、中国から大量のアヒルを送ることになったと伝えた。」などとする記事。
【検証】未だ実現せず 別々の情報混同か

このニュースは元々中国国営の中国環球電視網(CGTN)が「10万羽のアヒルが国境に集結している」として動画とともにに伝えたもので、これを発端に世界各国のメディアで取り上げられた。日本でも上掲のレコードチャイナ記事を中心に、ライブドアニュース公式アカウントによるツイートが4.4万RTされるなど拡散されている。

しかし、アヒルを「送ることになった」「国境に集結している」というニュースの続報はいまだ無く、実際に「アヒル軍」の派遣は実現していないようである。毎日新聞(有料記事)の取材によればCGTNのアヒルの動画は、パキスタン側の国境からは遠く離れた浙江省で撮影された無関係のものだという。

この件は、中国政府からパキスタンにバッタ対策の専⾨家チームは実際派遣されていたこと、同時期に浙江省の研究者が「10万⽻のアヒル」の有効性を主張したことが重なり、中国政府がアヒルを派遣するという話に転じたようである。

詳しくは、上記の毎日新聞記事や、検証ブログ「ネットロアをめぐる冒険」による解説を参照のこと。


(2)「日本の年間映画興行収入は紅しょうがの市場規模より小さい」

日付
3/18
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
8100RT
内容
「やっぱり最近No 1の驚きは『日本の年間映画興行収入1800億円は、紅しょうがの市場規模より小さい』って事。」という投稿。
【検証】計算上非現実的

この言説は2012年10月にTwitterに投稿され1.4万RTされたものとほぼ同文で、「1800億円」という数字も当時と変わっていない。日本映画製作者連盟が公表している統計によれば、2011年の邦画・洋画合わせた年間興行収入が約1800億円で当時としては正しいが、2019年は約2600億円に増加している。

一方で、紅しょうがの市場規模を推計するのに参考となるデータとしては、全日本漬物協同組合連合会が2018年にまとめた資料がある(最新の統計など、より詳しくは食品需給研究センターが公表している農林水産省の「食品産業動態調査」を参照)。

これによれば、漬物全体の製造出荷金額は概ね4000億円前後、紅しょうがを含むしょうが漬の生産量は重量ベースで漬物全体の8%程度なので、市場価格に換算したとしてもその規模が数千億円レベルになるとは考え難い。

なお、未確認だが、ウェブ上には紅しょうがの2014年の出荷金額を66億円とする業界紙のコピー画像も存在する。


(3)「トルコの渦巻き状の雲(動画)」

日付
3/21
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
8.6万RT
内容
「トルコにて、まるで天変地異の前触れ…」というコメントとともに投稿された、渦巻き状の雲が動いている動画。
引用
アカウント名等モザイク処理は筆者による(以下同様)
【検証】CGの可能性が高い

雲を専門とする気象学者の荒木健太郎氏はこの動画について「タイムラプスなのに太陽が動いてないし雲の輪郭や動きも雑」と不自然さを指摘、「何年も前から出回っているCG」と述べている。現に2016年に投稿されたこの画像では、異なる背景でこれ全く同じ形の雲が確認できる。

CGによってこのような画像を作成できることは、ツールを使って作成したと投稿者が表明しているこの画像からも証明される。また静止画像を元に雲に同じような動きを付けられるアプリの存在も指摘されている。

雲とともに映っている風景が本当にトルコかどうかも定かではない。


(4)新型コロナウイルス関連特集

以下、新型コロナウイルス(新型肺炎)に関連する“要注意”情報のうち、主要なものを簡潔に紹介します。(順不同)

1.「ヴィーガンが『コロナウイルスにも生きる権利がある』と主張」

→ソースは偽ニュースサイト

元記事(キャッシュ)の「Nordpresse」は事実と同時に故意の偽ニュースも掲載し読者を惑わすタイプのサイトで、サイト下部の注意書きには

Certaines informations présentes sur ce site sont satiriques et/ou parodiques, veillez à conserver un esprit critique, merci.
(サイトの一部の情報は風刺・パロディなので、批判的精神を忘れないようお気を付けください)

という文言がある。「Nordpresse(北部報道)」というサイト名もベルギー紙「Sudpresse(南部報道)」をもじったものと思われる。

この「ヴィーガンの主張」は他の信頼できるニュースソースからは報じられておらず、偽ニュースの方に属するものと考えられる。


2.「ベルギーでコロナ対策のため3人以上の不急不要の性行為を禁止」

→これも偽ニュースサイト

こちらの元記事は「World News Daily Report」というサイトで、よりはっきりと全ての記事がフィクションであると表明されている。

  • DISCLAIMER (World News Daily Reportによる免責事項)

3.「武漢の火葬場で発見された大量の携帯電話(動画)」

動画のスクリーンショット
→新型コロナ流行以前のもの

この動画は編集によって左右が反転されたうえ中国語の字幕や悲しげなBGMが加えられているが、元の動画は少なくとも新型コロナウイルス流行の少し前、2019年11月10日から存在(投稿日はページソースにより確認)。撮影された状況は不明ながら、場所は屋外で「火葬場」のようには見えない。

また、同年9月24日にも同じアカウントから、大量の携帯電話が掻き集められる似た光景の動画が投稿されている。


4.「ベネチアに白鳥・イルカ」

→白鳥は元々よく現れる イルカは別の場所

コロナウイルスの影響で街を歩く人が減り、ベネチア(ベネチア)の運河は水質汚染が改善されたと伝えられている。これに関連し白鳥やイルカが現れたという話題が拡散されたが、正確ではない。

拡散された白鳥の写真は、運河で有名な都市ベネチアからやや離れた観光地ブラーノ島で撮影されたもの。ブラーノ島は県とその下のコムーネの単位でベネチアという名の自治体に属するため、「ベネチアに白鳥」自体は誤りとも言い切れない。しかしブラーノ島は普段から白鳥がよく現れる場所であり、コロナウイルスで人が減った影響とは関係が無い。

また同じく拡散されていたイルカの動画は、ベネチアの運河ではなく遠く離れたサルディーニャ島のカリアリという港で撮影されている。


5.「酔っぱらって茶畑で寝るゾウ」

投稿のスクリーンショット
→画像は過去のもの 酒を飲んだかは不明

人間が距離を取り合っているのと対照的だとか、人が外出を控えたのが原因といったように、新型コロナウイルスの流行と関連付けた言説も見られるが、少なくとも左の画像は流行以前の2018年には存在している。

これらの写真とは無関係に、中国・雲南省でゾウの群れが農作物を荒らす事件は3月9日と11日に実際起きている。ゾウは酒の入った容器をひっくり返したというが、中の酒を飲んだかどうかは確認されていない。


6.「イタリアで60代以上に人工呼吸器使わず」

病院が否定 ソース記事は削除

イタリアのメディア「il Giornale」がミラノの医師の話として伝えたものだが、これに対し人工呼吸器を使っていないと示唆された病院の医師が反論。記事は「フェイクニュース」であると非難した。「il Giornale」の記事は削除されている。


7.「1720 ペスト 1820 コレラ 1920 スペインかぜ 2020 新型コロナ」

→流行開始年は不正確

疫病の大流行がちょうど100年おきに発生しているという指摘だが、不正確あるいは恣意的な言説である。

ペストは14世紀のヨーロッパを始め歴史上何度か大流行を起こしているが、1720年はフランス・マルセイユでの比較的小規模な流行だった。コレラの世界的流行は1817~38年頃。スペインかぜは1918~20年、今回の新型コロナウイルスも2019年からと、いずれも「XX20年」を含んではいるものの流行はそれ以前から始まっている。

海外では「1320年」に始まるさらに長いリストが拡散されたが、当然ながらより正確性に欠ける内容になっている。


その他

FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)では新型コロナウイルスに関する情報の検証結果などをまとめた特設サイトを開設。国内外の真偽に疑義のある情報を紹介し、随時更新している。

また過去のまとめでも、新型肺炎関連の様々な誤情報について検証を紹介している。

 

(過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年4月1日の予定です)

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