東京都の小池百合子知事が4年前の選挙公約で掲げた「ダイバー・シティ」の中で「待機児童ゼロ」を目標に保育所の受け入れ年齢などの規制を見直すなどと約束した。「待機児童ゼロ」が一挙に実現することはないが、その目標に向かって着実に施策が進み、成果が現れているかを検証した。(宮原ジェフリー)
検証対象の公約内容
「待機児童ゼロ」を目標に保育所の受け入れ年齢、広さ制限などの規制を見直す。
保育ママ・保育オバ・子供食堂などを活用して地域の育児支援態勢を促進する。
(2016年都知事選の公約「ダイバシティー」(2))
検証
待機児童は大幅に減少
小池氏は、就任後の所信表明でも「喫緊の課題」として待機児童の解消を挙げ、「保育所等の整備促進」「人材の確保・定着の支援」「利用者支援の充実」をその柱にすることを宣言した(平成28年第三回都議会定例会知事所信表明)。果たして、小池都政の取り組みはどうだったか。
結論からいえば、小池知事就任時の2016年には8,466人いた待機児童は、2019年には3,690人と大幅に減少した。
ただし、小池氏は自身の公式サイトの「過去実績」の中でこれを「四半世紀ぶりの低水準」と記述しているが、この点は要注意だ。2020年3月24日の都議会予算特別委員会で大山とも子都議会議員が質問で明らかにしたように、待機児童の定義は2002年に見直されており、認証保育所を利用している児童を待機児童に含む旧定義で算出すると2019年の待機児童数は22,884人となるため、旧定義で算出された「四半世紀前」の数字と比較するのは適切とは言い難い。
保育ママ・子供食堂の推進は
俗に保育ママ・保育オバと呼ばれる家庭的保育事業は、区市町村の管轄であるが、東京都としては「認可外保育施設利用支援事業」を2016年度から開始し、これを支援している。
また、2018年からは「子供食堂推進事業」を開始し、子供食堂を運営する区市町村に対する補助を実施している。
公約の規制緩和は実現せず
一方「保育所の受け入れ年齢、広さ制限などの規制を見直す」という公約はどうなったか。
実は、小池知事は、就任1年目の2016年、国家戦略特区諮問会議で、小規模保育所の年齢制限の撤廃などの規制緩和を要望していた。だが、翌年「小規模認可保育所における対象年齢の拡大」の規制改革特区が設けられたが、東京都は対象にならなかった。
つまり、小池氏が約束した保育所の規制緩和は、いまもって実現していない。
結論
小池都政において待機児童は「ゼロ」には届かないものの、減少にむけて大きく前進したことは事実であり、家庭的保育や子供食堂などの周辺事業に対するサポートにも積極的に取り組んでいることがわかる。ただ、小池氏が約束した保育所の規制緩和は実現していない。したがって、本公約に関する小池都政の評定は「良」とした。