小池氏は2016年の都知事選で「保育施設・介護施設不足の解消」という公約を掲げた。保育施設不足」は「解消」に至らないまでも、目標に向けて一定の前進が認められた。他方「介護施設不足」は「解消」に程遠い状態だ。韓国人学校への貸与を撤回した都立高校跡地は、結局、保育施設・介護施設のために使われていない。(楊井人文)
検証対象の公約内容
あらゆる都市遊休空間を利用し、保育施設、介護施設不足を解消。
同時に、待遇改善により、保育人材、介護人材を確保する。
都立高校跡地を韓国人学校に貸与する前知事の方針は白紙撤回。
(2016年都知事選の公約「ダイバー・シティー」(3))
検証
保育施設不足解消、保育人材確保は
小池氏は知事就任後に策定した「2020年に向けた実行プラン」において、保育サービスの充実については次のような政策目標を定めていた。
待機児童解消の目標ついては、別の公約で検証済みであるが、完全な「解消」には至っていないが、大幅に減少したことは事実である。
保育サービス利用児童数は、2019年4月までの3年間で約4万7千人増、認可保育所・認証保育所の合計定員数は3年間で約5万1千人増となっていた(都の発表資料)。この増加ペースでいけば4年間で約6万8千人増となるため、ほぼ目標到達できるペースと言える。
公約では「待遇改善」も掲げていたが、実際に都独自の保育士給与補助額をそれまでの2万3千円から4万4千円に増額しており、公約を実行したと評価できる(「東京都の保育施策について」参照)。
介護施設不足解消、介護人材確保は
小池氏は知事就任後に策定した「2020年に向けた実行プラン」で、介護施設の充実については次のような政策目標を定めていた。
介護施設は様々なタイプのものがあるため、ここでは最もニーズが高い「特別養護老人ホーム」(特養)について検証する。「特養」とは、中~重度の要介護高齢者が身体介護や生活支援を受けて居住する施設。入所できずに待機している人が多いことが問題になっている。
小池都政下で、特養の入所待機者(公的には「入所申込者」という)をどれだけ減らせたかを調べたところ、2019年4月時点で3年前に比べて5%減少していた(東京都資料)。だが、この調査は3年ごとに行われており、前回調査(2016年4月時点)は3年前より29%減少していた(東京都資料)。つまり、小池都政下で入所待機者の減少幅が縮小したことがわかる。
小池知事就任後、特養の定員を10年間で約1万6千人増という目標を設定している。1年あたりに換算すると1600人増だ。都の資料によると、2019年9月末時点で特養の定員は49279人となっており、2015年12月末より5394人増だった。つまり、目標の定員増ペースには届いていないと見られる。
都立高校跡地は保育・介護施設のために利用されたわけではない
小池知事は就任後初の定例会見で、舛添要一前知事が決めた都立高校跡地を韓国人学校に貸与する方針の白紙撤回を表明。ただ、都立高校跡地を保育・介護施設の不足解消のために利用するかのように示唆する公約だったが、結局、新宿区に別の目的で貸しており、保育・介護施設不足解消のために利用されていなかった。
結論
保育士の待遇改善、保育施設定員増は公約通り実行しており「保育施設不足解消」に至っていないが、一定の評価はできる。一方、介護施設については「特養」の入所待機者の減少ペースがガクンと落ち、「介護施設不足解消」はかえって遠くなっている。よって、この公約に関する取り組みは「可」と評定した。