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小池都政 公約検証[25] 東京版グラミン金融の推進に取り組んだか?

小池都政 公約検証[25] 東京版グラミン金融の推進に取り組んだか?

2016年の東京都知事選挙で公約として掲げた「フィンテックの活用を含め、東京版グラミン金融(小口無担保融資)を推進」に、小池百合子氏はどう取り組んできたのか。就任前の支援事業を引き継ぎつつ、新たなシンポジウムや表彰制度をスタートしていた。(安藤未希)

検証対象の公約内容

フィンテックの活用を含め、東京版グラミン金融(小口無担保融資)を推進する。
2016年都知事選の公約「スマート・シティー」(8)

小池都政検証シリーズについて

検証

まず「グラミン金融」という言葉について確認する。一般的にほとんど知られていないと思われるが、バングラデッシュで経済学者のムハマド・ユヌス博士(2006年ノーベル平和賞)が貧困層に無担保で融資し、自立を支援するために設立した「グラミン銀行」に由来すると考えられる(JICAのホームページ参照)。つまり、貧困層の自立支援を目的に無担保の少額融資を行う活動と理解した上で、それに関連する政策や事柄を確認する。

事業は小池都政以前からスタート

東京都では小池知事就任前の2014年から、低金利・無担保の融資と経営サポートを組み合わせた「女性・若者・シニア創業サポート事業」を開始していた。支援の対象者は「女性、若者(39歳以下)、シニア(55歳以上)で、都内における創業の計画がある者、又は創業後5年未満の者(NPO等も含む)」である。

グラミン銀行は、融資の受け手の資産制限は課しているが、性別や年齢の制限はないので、グラミン銀行とは異なる部分もあるが、これが「東京版グラミン金融」と言うことができるだろう。

小池都政での取り組み

2017年2月、小池知事は、グラミン銀行を設立したムハマド・ユヌス氏と、朝日新聞社・九州大学主催の「ソーシャル・ビジネスで未来をつくろう」に参加し、パネル討論を行っている。

また、先ほどの「女性・若者・シニア創業サポート事業」の利用対象者向けに、ソーシャルビジネス創業者から話を聞く「ソーシャルビジネスをテーマとしたシンポジウム(2018)」、実際にこの事業を利用して創業した人の話を聞くシンポジウム「社会を変えるシゴトのカタチ(2019年)」を開催し、2020年には当事業を活用して実績を上げているシニアを対象にした「シニア表彰式、創業者・創業希望者向け交流会」を開催し5名を表彰。東京都知事賞受賞者には奨励金70万円と展示会出展支援を贈呈した。

当事業は先に述べた通り、2014年に開始されているが、予算は年度によってかなりばらつきがある。小池知事就任後の2017年度以降はその中でも安定して予算を取っている。ただ、フィンテック(金融サービスと情報技術を結びつけた革新的な動き)については、海外のフィンテック企業の東京都内誘致などに力を入れていることが確認できたが、グラミン金融関連の企業は確認できず、活用事例も確認できなかった。

また、グラミン銀行を範とする民間の一般社団法人「グラミン日本」が2018年9月、都内で設立されたが、東京都は貸金業登録をした以外には、特段の関与は確認できなかった。

結論

グラミン銀行創設者とのパネル討論、シンポジウムの実施などを行い、比較的安定的に予算を確保していたが、成果が不明確なこともあり、本公約に関する取り組みは「良」と評定した。

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