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【日本学術会議問題】菅首相会見(10月9日)

【日本学術会議問題】菅首相会見(10月9日)

菅義偉首相が日本学術会議の会員6名の任命を拒否した問題で、菅首相は10月9日のグループインタビューで、前回同様、推薦者をそのまま任命する前例を踏襲して良いのかと考えてきたと改めて述べる一方で、任命する前の推薦段階のリストは見ていないと話した。(インファクト編集部)

(注)会見録一覧はこちら。記者会見は公開情報ですので、転載等は自由です。首相官邸サイトの動画などで発言内容を確認し、日本学術会議関連の発言は全て抽出するようにしています。途中で別の内容で質疑応答があった箇所は横ラインを入れています。聞き取りにくい部分などは●●としています。必要に応じて正確を期すための修正を行います。

菅義偉首相 グループインタビュー(10月9日)

(記者)
毎日新聞の●●と申します。本日はよろしくお願いします。
まず最初に日本学術会議の会員の任命の問題についておうかがいたします。
今日あの、河野大臣と井上大臣がそれぞれ学術会議を行革の対象として検証を行うと表明されました。
で、総理ご自身は先日のインタビューで、現会員による推薦について、事実上の後任指名が可能な仕組みだと問題視をされ、省庁再編時にあり方そのものが議論になったことにも触れておられました。
現状で、ま、今後この会員の推薦制度について見直すお考えはあるのでしょうか。
また、学術会議そのもののあり方についても見直すお考えはあるのでしょうか。
お聞かせください。

(首相)
まず、これまでも、説明をしておりますように、日本学術会議については、法律に基づいて、内閣法制局にも確認の上で、学術会議の推薦者の中から、総理大臣として指名、任命をしているものであると思っています。
この日本学術会議は、政府の機関であって、年間約10億円の予算を、ま、使って活動していること、また任命される会員は公務員の立場になること、また会員の人選は、推薦委員会などの仕組みがあるものの、現状では、まあ事実上は現在の会員が自分の後任を指名することも可能な仕組み、こうなっている、まあこうしたことを考えて、推薦された方々がそのまま任命されてきた前例を踏襲をしていいのかどうか、まあそうしたことを考えてきたということであります。
それで、これ2001年の省庁再編の際に、この相当の議論があったということで、その議論の中で、長期的、総合的、国際的観点からの提言が求められており、俯瞰的な視点を持って、社会的課題に向き合うことができる制度、まああの、できる人材が望ましいというふうに思っています。
今回、日本学術会議の役割に関心が集まっています。
まあこれを機会に、日本学術会議のあり方、良い方向に進むようなら、そうしたことも歓迎はしたいと、このように思っています。

(記者)
朝日新聞の●●と申します。よろしくお願いします。
日本学術会議のですね、任命除外問題の経緯についておうかがいします。
2016年から推薦決定前に官邸側が難色を示す事例が複数確認されています。
政府としてはいつ、何をきっかけに、形式的任命をですね、取らなくなったのでしょうか。
また、今年の6人の除外について、安倍前総理からこの案件の引き継ぎを受けたのはいつで、引き継ぎの時点で6人の任命除外は申し送りがあったのでしょうか。
お願いします。

(首相)
あのー、まず、この内閣府で、そのー、日本学術会議の会長が、中で、この会議のあり方などを、そうしたこともやり取りは、当然行ってきているというふうに思っております。
そうして、えー、今までの経緯の中でですね、そのー、総合科学技術会議の意見具申によれば、日本学術会議は、科学者の知見を集約をして、長期的、総合的、国際的観点から行政や社会への提言を行うこと、総合的俯瞰的な観点から活動すること、こうしたことが求められてきています。
さらに平成27年の内閣府の有識者会議においては、日本学術会議の会員は自らの専門的分野の枠にとらわれない俯瞰的視点を持って社会的課題に向き合うことができる人材が望ましい、まあこうしたこととされてます。
こうしたことを踏まえて、法律に基づく任命を行う際にはですね、総合的、俯瞰的な活動すなわち広い視野に立ってバランスの取れる活動を行っている、国の予算を投じる機関として、国民に理解される存在であるべき、まあこうしたことを念頭にですね、えー、その、内閣府等で、そうした議論をしていることは事実じゃないでしょうか。

(記者)
すみません、安倍前総理からの引継ぎというのはあったのでしょうか。

(首相)
あの、ありません。

(記者)
じゃあご自身で今回決断をされたということ?

(首相)
あの、そうした一連の流れの中で判断をしたということであります。

(記者)
時事通信のオオツカです。引き続き、学術会議についてうかがいます。
学術会議側は6人の任命を見送ったことについて説明を求めています。
総理自身が梶田会長とお会いし、直接説明される考えはありますでしょうか。

(首相)
今も申し上げましたけど、日本学術会議については省庁再編の際にですね、そもそも必要性を含めてそのあり方について相当のこれ議論が行われた経緯があります。
その結果として、総合的俯瞰的な活動を求める、まあそういうことになった経緯です。
さらに、この総合的俯瞰的活動を確保する観点から、日本学術会議にその役割を果たしていただくために、まあふさわしいと判断をされる方を任命をしてきました。
こうしたことを今後もですね、まずは丁寧に説明していきたいというふうに思います。
また、梶田会長とはですね、まあ日頃から、これ事務局との間で、これ取っているというふうに思いますが、会長がお会いになりたいということであれば、私はお会いをさせていただく用意というのは持っております。

(記者)
いまおっしゃったその総合的俯瞰的な活動ということなんですけれども、どうしてもなかなか国民の方々にはわかりづらい部分だと思うんですが、総理としては具体的にどのような活動を求めているということなんでしょうか。
国民にもわかりやすいような判断材料をお示しいただければと思います。

(首相)
えー、いま申し上げましたようにですね、この日本学術会議、ここをどうするかということで議論があったわけです。
それで、ま、科学者の知見を集約をして、まあ長期的また総合的に、国際的観点から、行政や社会への提言を行うこと、そして総合的俯瞰的な観点から行動すること、このことが議論の中で求められてきたわけです。
さらに、平成27年の内閣府の有識者会議においては、日本学術会議の会員は、自らの専門分野の枠にとらわれない俯瞰的な視点を持って社会的課題に向き合うことができる人材が望ましい、これ有識者会議でそういう方向出されてます。
で、これを踏まえて、法律に基づいて任命を行う際には、総合的俯瞰的な活動、すなわちですね、広い視野に立ってバランスの取れた活動を行い、国の予算を投ずる機関として、国民に理解される存在であるべきこと、こうしたことをやはり念頭に置きながら、これは判断を行う必要がある、こういうふうに思います。

(記者)
そういう意味では6人の方というのはそこに当たらなかったということでよろしいですか。

(首相)
いま私が申し上げた通りです。
すなわち、広い視野に立ってバランスの取れた行動を行い、国の予算を投じる機関として国民に理解される存在であるべきこと、こうしたことを念頭にこれ全員判断をしている、まあそういうことです。

(記者)
すみません、今の関係ですが、専門分野以外の業績が考慮されるということですけれども、具体的にはどのような業績が考慮されるということなんでしょうか。

(首相)
いま私が申し上げましたように、自らの専門分野の枠にとらわれない俯瞰的な視点を持って、社会的課題に向き合うことができる人材が望ましい、こうしたことを平成27年の内閣府の有識者会議においてこうした意見をいただいています。
ですから、これらを、こうしたことを踏まえてですね、法律に基づいてこれ任命を行うわけでありますから、その際には、総合的俯瞰的な活動、いま申し上げましたけど、この総合的俯瞰的な活動ちゅうのは、やはり、すなわちこの広い視野に立ってバランスの取れた活動を行い、国の予算を投ずる機関として国民の理解をいただく存在であるべきだと、まあこうしたことを念頭に置いてですね、まあ判断をするということが自然なことじゃないでしょうか。

(記者)
バランスの取れた活動ということの中にですね、例えば学者個人の思想信条が影響するということはあるんでしょうか。

(首相)
それはありません。

(記者)
今回の会員の推薦・任命手続きについては、なかなかわかりづらいところもあるんですけれども、今後その、会議のあり方を見直して、法律の改正を考える可能性もあるんでしょうか。

(首相)
まず、いま申し上げましたけど、この、かつて総合科学技術会議の意見具申には、日本学術会議、これ総合科学技術会議の中で意見があったわけです。
それについては科学者の知見を集約し、長期的、総合的、国際的観点から、行政や社会への提言を行う、こういうことがこれ求められています。
そしていま申し上げましたけど、27年の内閣府の有識者会議においては、この学術会議の会員というのは、自らの専門分野の枠にとらわれない俯瞰的な視点を持って社会的課題に向き合うことができる人材が望ましい、こうしたことも報告をされてます。
そして、こうした観点に立った上でですね、日本学術会議は、これ政府の機関でありですね、年間約10億円の予算を使って行動していることやですね、任命されるこの会員の方はですね、公務員の立場にこれなるわけでありますから、国民の皆様から理解される活動をいただく必要があるというふうに思っています。

(記者)
1983年度の中曽根元総理の国会答弁などもありますけれども、その当時、えーと、内閣総理大臣官房参事官の答弁では、210人の推薦をそのままその通り、総理が形式的な発令行為を行うと解釈しているとおっしゃって、いう答弁があるんですけれども、それに関して解釈が変更していないと政府側はずっとお答えになっていますが、それで間違いないのでしょうか。
あと、解釈は変更しないまま、全員任命するという前例を踏襲せずに、今回そのいわゆる運用を変更したということなのでしょうか。

(首相)
あの、これは、毎日の官房長官の記者会見でもこれ説明をしているというふうに思っています。
まあ国会答弁でも局長から説明させていただいていますが、憲法第15条の規定に明らかにされている通りですね、公務員の選定は国民固有の権利であり、任命権者たる内閣総理大臣として責任をしっかり果たしていく、こういう一貫した考え方に立った上で、まあ法律に基づいて任命を行ってきているものでありですね、解釈変更を行っているものではないというふうに思ってます。
またその上で、推薦された人をそのまま任命されてきたことについてはですね、これまでそうした前例を踏襲をして良いのかという思いがあってですね、日本学術会議がこれまで言われてきたような、総合的俯瞰的活動、いわゆるいま申し上げましたけれど、広い視野に立ってバランスの取れた活動を行い、国の予算を投ずる機関として、国民に理解される存在であるべきという、まあこうしたことを念頭に判断をさせていただいているということです。

(記者)
すみません、関連しまして、83年の国会答弁についてですが、このときは国会で表でオープンに議論されています。
今回ですね、18年に内閣府と法制局の方で運用を変えたということですが、これは本来国会の方でオープンに議論されるべきだったんではないでしょうか。

(首相)
まず、いま申し上げましたように、変更しているということでありませんので、えーこの、憲法第15条の規定に明らかにされているように、公務員の選定は国民固有のこれ権利であって、任命権者である内閣総理大臣として、これ責任をしっかり果たしていくというこれ一貫している考え方でありですね、法律に基づいて任命を行ったものであり、解釈変更を行ったものではない、こういうふうに思っています。

(記者)
その重大な決断をする中において、やはり国会の方でオープンに議論されるべきではなかったのかという質問なんですが。

(首相)
あのー、解釈の変更は行ってません。


(記者)
話題また戻るんですけれども、任命、今回学術会議に任命されなかった6人に関しては、その、今後もこの6名を任命することはもうこの先ずっとないということなんでしょうか。
それとも状況であったり、それぞれの活動内容であったり、変更があれば、改めて任命する可能性があるんでしょうか。

(首相)
まあのー、これ官房長官を申し上げてますように、今回の10月1日に99名の方をこれ任命しておりですね、今般の任命手続きは終了したと、こういうふうに考えています。
今回の任命について変更するということは考えておりません。

(記者)
今後の任命の際にこの6人の方、また3年後であったり、この6人の方が出てきた場合には、対応が変わる可能性はあるんでしょうか。

(首相)
まず仮定の質問でありますので、ここは控えさせていただきたいと思いますけれども、まあいずれにしろ、法律に基づいて任命を行う際にはですね、日本学術会議がこれまで言われてきたように、総合的俯瞰的な活動、いわゆるこの幅広い視野に立ってバランスの取れた活動を行い、国の予算を投ずる機関として、国民に理解される存在であるべきである、こうしたことを念頭にこれやはり判断をしていく、まあこういうことになるだろうと思います。

(記者)
えーすみません、日本学術会議の軍事研究についておうかがいしますが、17年に会議は軍事研究に協力しないという声明を出したことをですね、現在総理はどのように評価されていますでしょうか。
また日本の大学は軍事協力に門戸を開くべきだとお考えでしょうか。
中国や米国の状況など国際状況を踏まえた上でお聞かせください。

(首相)
まず、いま先ほど来申し上げてますけれども、日本学術会議のあり方ということに省庁再編の際にですね、これ、相当な議論があって、その議論で、長期的、総合的、国際的観点からの提言、これ求められてます。
そして俯瞰的な視点を持って社会的課題に向き合うことができる人材が望ましい、こうしたことがこの2001年の省庁再編の際に話し合われました。
日本学術会議の役割にいま非常に関心が集まっています。
これを機会にですね、学術会議のあり方というのが良い方向に進むようなら、そうしたようなことは歓迎をしていきたいというふうに思います。

(記者)
具体的にその総合的俯瞰的の中に軍事研究というのが入る可能性はあるんでしょうか。

(首相)
あの、先ほど申し上げましたように、幅広くですね、広い視野に立ってバランスの取れたということであります。
そうしたことに対してでですね、まあしっかり対応していくことが大事だというふうに思います。

ーー
(記者)
また学術会議なんですけれども、そのこれを機会にあり方が良い方向に進むようなら歓迎したいということなんですけれども、総理がそのー、主体的にあり方の見直しに関して検討を指示されたりするお考えはあるんでしょうか。

(首相)
あの、私からというよりも、いま党の方でも、政調会長のもとで、えー、このあり方について、いろんな議論をしているようであります。
まあそうしたことをしっかり見ながら、というふうになっていく、というふうに与党と連携をしていくという形になっていくんだろうと思います。

(記者)
いまの段階で総理からすぐご指示を出されるお考えというのは。

(首相)
あの私から、今で、そのあり方ということについて私指示することは考えていませんけれども、まあ行政改革の観点から河野大臣が、これ全体の行政改革の中で、取り上げることちゅうことじゃないでしょうか。

(記者)
学術会議のあり方に引き続きおうかがいしたいんですが、安倍政権時代の内閣府特命担当大臣のもとに設けられた有識者会議が2015年にまとめた報告書で「変える理由は見出しにくい」というふうにしております。
また事務局体制の増強も指摘されています。
今日、河野大臣が会議の見直しに言及されているのですが、この間に方針が変わったということなんでしょうか。

(首相)
あのー、方針が変わるよりも、現実的に確か210人の学術会議の中で、事務局員が確か52人ほどいると言われています。
ま、国費がこれ投入されてますので、そうしたことも含めて、河野大臣が、まあ全体のこれ、ここも一つの国の機関ですから、これ独立すれば全く別ですけども、そうしたことで全体を河野大臣が、この行革の視点で、これは行っていくことは、行革大臣としてある意味では当然のことじゃないかなというふうに思います。


(記者)
また学術会議なんですが、総理が、まあ先ほど安倍総理からの引継ぎはなかったということなんですが、最初に案をご覧になったのはいつ誰からの報告だったんでしょうか。
その時点では105人の名前が載っていたんでしょうか。

(首相)
あのー、私がいつかということは、確か、9月の… にじゅう、ちょっとすみません、間違っちゃうとあれですから … 9月の… これ内閣府が今まで説明してますけど、私が最終的に決裁を行ったのは9月28日です。
で、会員候補のリストを拝見したのはその直前だったと記憶しております。
まあその時点では、現在の最終的に会員となった方がそのままリストになっていたというふうに思ってます。

(記者)
総理がご覧になった段階ではもう99人だったという。

(首相)
あの、そういうことです。
あの、任命するリストでありますから。

(記者)
任命するその前の推薦段階でのリストはご覧になってない?

(首相)
見てません。


2020年10月9日、ジャーナリスト西村カリン氏の録音より。冒頭写真は首相官邸の10月7日撮影より。グループインタビューの時のものではない)

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