2016年の東京都知事選挙で小池百合子氏は「満員電車をゼロへ。時差出勤、2階建通勤電車の導入促進」を公約に掲げていた。任期中にこうした取り組みを行い、効果は出ていたのか、調べてみた。(宮原ジェフリー)
検証対象の公約内容
満員電車をゼロへ。時差出勤、2階建通勤電車の導入促進。
(2016年都知事選の公約「ダイバー・シティ」(7))
検証
時差出勤キャンペーンはしたが…
東京都は、2017年からラッシュ時の混雑緩和のための取り組み「時差Biz」を鉄道事業者などと共同でスタート。2020年1月時点で参加企業は1498社になった(「3つのシティ実現に向けた政策の強化」)。2019年からはテレワーク、時差Bizなどを総称して「スムーズビズ」という取り組みをスタートさせている。
テレワーク導入企業の割合も2017年には6.8%だったが、翌2019年には速報値で25.1%まで伸びている。(参考:テレワーク活用に向けた支援(TOKYOはたらくネット)。これはコロナウイルスの感染拡大でテレワーク導入が大幅に拡大する前の数値であるため、小池都政での施策として評価できる要素となりうるだろう。
ただ、国土交通省の調査では、東京圏の鉄道の混雑率は横ばいで推移し、小池都政下で改善していない。東京圏の主要区間の平均混雑率は163%で、大阪圏(126%)、名古屋圏(132%)と比べても大きな開きがある。「ピーク時における混雑率180%以下」という国の目標を上回る路線が11路線ある(2019年の国交相発表資料より)。
【目標混雑率180%を超えている東京圏の路線】(単位:%)
2019年 | 2018年 | |
東京地下鉄東西線 | 199 | 199 |
JR東日本横須賀線 | 197 | 196 |
JR東日本総武緩行線 | 196 | 197 |
JR東日本東海道線 | 191 | 187 |
東京都日暮里舎人ライナー | 189 | 187 |
JR東日本京浜東北線 | 185 | 186 |
JR東日本南武線 | 184 | 189 |
JR東日本埼京線 | 183 | 185 |
JR東日本中央快速線 | 182 | 184 |
東急田園都市線 | 182 | 185 |
JR東日本総武快速線 | 181 | 181 |
(出所:国土交通省2019年7月18日報道発表)
2階建通勤電車は導入に向けた動きなし
公約で明記されていた「2階建通勤電車の導入促進」については具体的に取り組まれた形跡はない。東京都交通局は都営地下鉄や日暮里・舎人ライナーを運営しているが、2階建車両を導入するという動きも全くみられなかった。
東京都が2019年12月に発表した「『未来の東京』戦略ビジョン」にも、「満員電車解消」を「目指す2040年代の東京の姿」の長期的ビジョンとして盛り込んだものの、それを実現する道筋を示せているとは言い難い。
結論
実現可能性の低い公約で「大風呂敷」であったとの批判は免れない。時差出勤などの推進により混雑緩和に向けた取り組みはしたが、結果として混雑率は改善していない。「満員電車解消」の実現には程遠く、本公約の評定は「可」とした。