2016年の都知事選で、環境大臣経験者として「ヒートアイランド対策」を公約として強調した小池百合子氏。これらに関して一定の政策は行っているものの、本当に対策が「強化」され、目に見える成果を出しているのかを検証してみた。(楊井人文)
検証対象の公約内容
ヒートアイランド対策の強化と、都市農業の維持、発展。
(2016年都知事選の公約「スマート・シティー」(5))
検証
ヒートアイランド対策
ヒートアイランド現象とは、郊外に比べ、都市部ほど気温が高くなる現象のことで、東京都でも緑地等の減少、ビル密集などの都市構造が気温を押し上げる原因になっているとされている(気象庁参照)。東京都は国に先がけて2003年から対策に取り組んできた。つまり、ヒートアイランド対策は、小池都政の前から長らく行われてきたということだ。問題は、小池都政でその対策が「強化」されたと言えるかである。
小池氏は知事就任後に策定した「2020年に向けた実行プラン」において、この問題の対策のために、次のとおり「クルーエリア創出」「都道の舗装整備」の2点について政策目標を立てた。
「クールエリア」の創出についてみると、2019年度までに目標を上回る8エリアで実施。「都道の舗装整備」も、2018年度までに累計129kmで実施、順調に整備が続いている(主要事業の進行状況報告書)。これらの整備の効果は見えにくいものの、ヒートアイランドの緩和に一定の効果はあるだろう。ただ、クールエリアは、主に五輪競技会場周辺での観光客が集まる場所に重点を置いており、五輪対策という側面があることに留保が必要だ。小池都政で対策が格別に強化されたとは必ずしも言えない。
都市農業の衰退に歯止めはかかったか?
小池氏は2016年都知事選の政見放送で「都市農業を守ることはヒートアイランド対策にもなる」と語っている。国の「都市農業振興基本法」制定を踏まえ、小池都政下で「東京農業振興プラン」が策定され、東京農業の課題として示されたのは、担い手の高齢化や農地面積の減少だった。そこで、「担い手の確保・育成」や「農地の保全」が政策目標となり、研修などの事業が実施された(「3つのシティ」の実現に向けた 政策の強化(2020年度)p.132参照)。
問題は、都市農業の縮小に歯止めをかかったかどうかだ。東京都の農業統計を調べた結果、小池都政の後も、農地面積、農家数、農業人口の減少傾向に変わりはなかった。政策の効果をあげるのは難しいと考えられるが、これらの数値をみる限り、課題解決に向けて目に見える効果に結びついているとは言えない。
結論
ヒートアイランド対策の取り組みは評価できるものの、五輪対策に重きを置いており、格別に強化されたとは言えない。都市農業に関しては、従来の担い手の育成などに取り組んでいるが、全体的な縮小傾向に歯止めがかかっていない。よって、総合的に評定は「可」とした。