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《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.50/2020.9.17)

《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.50/2020.9.17)

インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜ネット上の情報検証まとめ管理人)


(1)「バイデンに質問の女性『紙を読めと言われた。あなたは真実を話さないといけない』」

日付
9/4
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
5200RT
内容
バイデンのイベントに参加した黒人女性は、バイデンに質問する内容を指示する『紙』を渡されていた。 女性『正直に言わせて頂くわ、ミスターバイデン。この紙を読めって言われたけど、わたしにはできないわ。あなたは真実を話さないといけないの。』」とする動画付きの投稿。
引用
※アカウント名等モザイク処理は筆者による(以下同様)
【検証】不正確な訳を付け加えミスリード 女性はバイデン指示を否定 

動画は、アメリカのトランプ大統領の選挙対策本部公式Twitterアカウントが4日に投稿したものの転載。選挙対策本部の投稿は上掲の日本語投稿の「~私にはできないわ。」の部分までとほぼ同内容で、約2.4万RTされている。

大統領選候補のバイデン氏を前にスピーチした黒人女性が、「この紙を読むよう言われたけどできない(I was told to go off this paper, but I can’t)」と発言したのは事実である。だが、女性はスピーチ内ではこの指示が誰からのものだったのか明言していない。

その後、バイデン氏の陣営が「やらせ」の質問を女性に指示したとの解釈が広まったため、米紙ワシントンポストの取材に答えたこの女性は、紙は自身がオーガナイザーを務める人権団体が用意したと説明している。紙には団体による具体的な要求事項が書かれていたが、それよりも自分の思いをそのまま述べようと思ったという。

「あなたは真実を話さないといけないの」という文はトランプ氏選挙対策本部の投稿には無く、日本語投稿で独自に付け加えられていた。しかも、動画内の実際の発言は「私たちには真実が必要で、私はその真実の一部です(We need the truth, and I am a part of the truth)」というもので、バイデン氏が何か隠していると示唆するような日本語とは意味にかなりの差がある。実際のスピーチ(動画42:48~)に「あなたは真実を話さないといけない」という表現は見当たらなかったが、この文言が付け加えられたことで、バイデン氏の指示という不都合な事実を女性が暴露したかのような誤った印象を導いた可能性がある。

詳細はAP通信の検証記事も参照。


(2)「月額29万円の生活保護が国から最低ラインとして支出」

日付
9/6
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
4.8万RT
内容
月額29万円の生活保護がおかしいのは確かだが、国から29万円が最低ラインとして支出されるというなら、最低賃金だって22日の8時間労働で手取り29万円行かないのを行政指導するべきではないのか…」とする投稿。
【検証】大半の受給世帯はこの額以下

これと全く同じ文面は数年前から複数のアカウントから投稿され続けていて、あたかも月額29万円が生活保護全体の「最低ライン」であるような印象を与えるが、これは正しくない。

生活保護費は、世帯ごとに「最低生活費」から収入を差し引いた差額が支給される。「最低生活費」は世帯構成や居住地などを考慮して決定されるため、養うべき子供が多かったり、物価の高い都心部に住んでいたりすると支給額は高くなる。

毎日新聞の検証では、厚生労働省資料から最低生活費の例を参照している(p15)。挙げられている例の中で最も高額なのは、東京23区在住⺟⼦3⼈世帯の⽉額25万8990円(2018年10⽉時点)。実際の支給額はここから世帯収入(年金、各種手当、親族からの援助等を含む)を引いたものになる。つまり、「月額29万円」を受け取るのは世帯人数がさらに多いなど一部のケースに限られ、受給世帯の約8割を占める単身世帯(厚労省資料第3-2表)ではこの額は難しいと考えられる。

毎日新聞は「月額29万円」の出元として、2013年の朝日新聞で紹介され批判を浴びた生活保護を受給する母子家庭の例が独り歩きした可能性を指摘している。


(3)「国から42万円出るから出産費用はゼロに近い」

日付
9/9
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
2700RT
内容
「出産費用ゼロ目指す考え表明『国として支援』」と題する産経新聞の記事に言及し、「出産費用って申請したら国から42万出るから、そんなセレブ向け個人産院じゃなければ、出産費用は今でもゼロに近い。」などとする投稿。
【検証】出産費用の全国平均は約50万円

出産時には健康保険から一律42万円の出産育児一時金が支給される。ほかに各⾃治体による独自の⽀援策を受けられる場合もあるが、投稿では触れられていない。

毎日新聞の検証では、国民健康保険中央会の資料を参照している。それによると、帝王切開などを除く正常分娩での出産費用の全国平均値(2016年度)は50万5759円、中央値は49万3400円。都道府県別では平均が42万円を下回るのは3県のみで、最も高い東京都では平均62万1814円と、一時金の額をを大きく上回る。

つまり、「セレブ向け個人産院」を利用しなくても、一時金の42万円で出産費用が「ゼロに近」くならないケースは十分にあり得ると言えるだろう。


(4)「『不気味の谷』は動物にはない」

日付
9/13
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
3.2万RT
内容
海外掲示板サイトredditの投稿を引き、「人間に良く似ているが違う物を見ると感じる恐怖『不気味の谷』。他の動物はそうした反応はなく自身に似た物を受け入れる。」などとする投稿。
引用
【検証】参照された論文の内容は異なる

不気味の谷」とは、人型のロボットや人形などでは一般的に見た目が本物に近いほど人に与える親近感が増すのに対し、本物に近いが少し違うというある範囲でだけ不気味さや違和感が急激に現れるという現象。

上掲投稿はredditの投稿内容をほぼそのまま日本語に訳したものなのだが、ここでredditの投稿者が参照している論文は、人間以外の動物に不気味の谷が無いと主張する内容ではない。

「バーチャルアニマルに不気味の谷はあるか?量的・質的研究(Is there an Uncanny Valley of Virtual Animals? A Quantitative and Qualitative Investigation)」と題する2017年発表のこの論文は、動物のCGを人間が見る時でも不気味の谷現象は起きるのかということを論じたもので、動物同士で不気味の谷現象があるかどうかは主題ではない。【※9/19追記:当初この論文について査読前のプレプリント版であるとしていましたが、査読付き学術誌に掲載されていることが分かったため、削除・訂正します。】

動物同士で不気味の谷現象が起こるかどうかの研究はまだあまり行われていないようだが、上記の論文も参考文献に挙げている別の論文では、CGで作られたサルの顔をサルが見つめる時間を計測することでこの現象を確認できたとしている。


その他

FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)では新型コロナウイルスに関する情報の検証結果などをまとめた特設サイトを開設。国内外の真偽に疑義のある情報を紹介し、随時更新している。

また過去のまとめでも、新型コロナウイルス関連の様々な誤情報についても検証を紹介している。

 

(過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年9月23日の予定です)

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