「プーチンがソチに持っている邸宅」とする画像がTwitterで拡散した。だが、この画像はロシア人の建築家Roman Vlasov氏によるコンセプトアートであり、実在する建築物ではない。(佐藤翠)
【誤り】 プーチン大統領の邸宅として拡散した画像は実在する建築物ではなく、ロシア人建築家が3Dイメージとして作成したコンセプトアートだった。
匿名アカウントによる英語での画像付き投稿「ロマン・ヴラソフがデザインした、ロシアのソチにあるプーチンの家 (元投稿:“Putin’s house in Sochi, Russia desinged by Roman Vlasov” )」は、東京大学公共政策大学院・鈴木一人教授が引用リツイートし、日本でも拡散した。4月11日時点で、約1280RT、約2300件のいいねを集めている。
しかし、この建築物はロシア人建築家であるRoman Vlasov氏によるコンセプトアートであり、実在しない。(※コンセプトアートとは、建築物等のコンセプトを視覚化し、絵として表現したもの)
Vlasov氏が投稿した内容は?
2021年1月25日、Vlasov氏のインスタグラムにこの2枚の画像が投稿されており、キャプションには「プーチンの家はこのような見た目かもしれない(”PUTIN HOUSE or a story about what his villa might look like”) 」と記載されている。
また、「#design」や「#concept」とも記載されており、実在の建築物ではなく単なるデザイン画であるということは明らかだろう。
(2021年1月25日、Roman Vlasov氏のインスタグラムへの投稿)
さらに、3月29日にVlasov氏がインスタグラム上で公開した同作品の動画のキャプションには”PUTIN HOUSE NFT” と記載されており、NFT(non-fungible token= 非代替性トークン)として購入可能なアート作品であることも分かる。
(2021年3月29日、Roman Vlasov氏がインスタグラムに投稿した動画)
※NFT(non-fungible token= 非代替性トークン)とは、芸術作品などの作者や所有者の情報を保証するデジタル資産。仮想通貨のようにブロックチェーン技術を用いており、インターネット上のデータであっても複製や改ざんが不可能で、第三者による検証なしに真正性を証明できる技術として注目されている。
海外メディアも検証済み
これらの画像は、海外でも幅広く拡散した。鈴木氏が引用した元の投稿は、2021年4月11日現在、約1.2万RT(内約7千件が引用ツイート)、3.3万のいいねを獲得している。
アメリカのファクトチェック団体「Snopes」は上記の画像を検証し、「キャプションが間違っている(”Miscaptioned”)」と判断。「画像はコンセプトデザインであり、実在するプーチンの家だとするのは間違っている(“This is a concept design, not a physical building, entitled “Putin House.”)」と述べている。
同様に、ロイター通信やUSA TODAYとったメディアも、上記画像はコンセプトアートであって、プーチン大統領の邸宅ではない旨のファクトチェックをおこなっている。
なお、別のファクトチェック団体「CHECK YOUR FACT」からの取材に対し、Vlasov氏は「これは、我が国のプーチン大統領宅のイメージです。この家が彼の所有物とはどこにも書いていません(“this is my vision of the house of the President of my country, Vladimir Putin. I have not written anywhere that this house is his property.”)」と、はっきり回答している。
結論
当該ツイートの添付画像は実在するプーチンの家ではなく、コンセプトアートだ。よって、当該ツイートを誤りと判定する。