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小池都政 公約検証[18] エコハウス・スマートハウスの補助は強化されたか?

小池都政 公約検証[18] エコハウス・スマートハウスの補助は強化されたか?

小池氏が4年前の東京都知事選立候補の際の公約の一つに「エコハウス・スマートハウスへの補助を強化する」というものがあった。家庭向けの省エネ予算は増えたが、その多くは家電買い替え促進に関するもので、エコハウス等への助成はむしろ減少していた。(楊井人文)

検証対象の公約内容

エコハウス・スマートハウスへの補助を強化する。
2016年都知事選の公約「スマート・シティー」(1)

小池都政検証シリーズについて

検証

エコハウス・スマートハウスとは

エコハウスとは、「地域の気候風土や敷地の条件、住まい方に応じて自然エネルギーが最大限に活かされることと、さらに身近に手に入る地域の材料を使うなど、環境に負担をかけない方法で建てられる」住宅のことを指す(環境省エコハウスモデル事業「エコハウスとは」より)。

一方のスマートハウスは「IT(情報技術)を使って家庭内のエネルギー消費が最適に制御された住宅」を指す(環境ビジネスオンライン「スマートハウス」より)。

こうした住宅への補助強化の公約は、東京都環境基本計画で掲げられている2030年までに家庭部門におけるエネルギー消費量を2000年比30%削減するという目標を念頭に、環境負荷の低い住宅の普及を促進する狙いがあるものと考えられる。

補助金制度を導入

小池都政下で初めて編成した2017年度予算では、新規に「既存住宅における高断熱窓導入促進事業」をスタート。3年間の助成実績は24.75億円だった。

2019年には、断熱性能と省エネ性能に優れた「東京ゼロエミ住宅」の仕様を定め、その普及事業をスタートし、18億円(19年度予算)、21.7億円(20年度)を計上した(参考:環境局令和2年度予算)。

小池都政前と比較すると

「家庭における省エネルギー対策の推進」予算を、前代の舛添都政下と比較してみると(東京都財務局の各年度の予算概要)、次の通りとなった。

  • 2016年度予算(舛添都政で編成):36.2億円(家庭におけるエネルギー利用の高度化促進事業)
  • 2017年度予算(以下、小池都政):46.2億円(家庭のLED省エネムーブメント促進事業に18億円)
  • 2018年度予算:7.0億円
  • 2019年度予算:71.5億円(うち、家庭のゼロエミッション行動推進事業に44.9億円)
  • 2020年度予算:96.2億円(うち、同事業に61.5億円)

一見すると舛添都政より予算が増えているように見える。だが、よくみると、この予算には、省エネ性の高い家電の買い替えでポイント付与する「家庭のゼロエミッション行動推進事業」が大きな割合を占めている。これはこれで意義のあることではあろうが、ポイント付与の対象はエアコン・冷蔵庫・給湯器で、住宅の構造を省エネ化するものではないため、本来の「エコハウス・スマートハウスの補助」と言えるのかやや疑問がある。家庭の電球をLEDと交換する「家庭のLED省エネムーブメント促進事業」も同様である。これらを差し引くと、4年間で総額96.5億円、年平均で換算すると24.1億円で、舛添都政の2016年度予算より少なかった。

舛添都政から行われてきた「家庭におけるエネルギー利用の高度化促進事業」は打ち切りとなり(総額47億円)、2020年度予算には盛り込まれなかった。

2020年に向けた実行プランでも、「エコハウス・スマートハウス」の普及に向けた明確な政策目標が掲げられていない。

結論

家庭の省エネ推進予算は増やしているが、中身を見ると省エネ家電の買い替え促進が中心で、いわゆる「エコハウス・スマートハウス」への補助が手厚くなったとは言えない。新規事業も始めたが、政策目標が明確でないため、本公約の評定は「可」とした。

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